「自分という人間を研究で表現したくて」
近藤久雄(Principal Investigator, CIMR, University of Cambridge)
(実験医学、2003年10月号、海外ラボ独立編より一部抜粋)
自分のラボを持ったときに最初に考えたことは、如何にして有名な巨大ラボに打ち勝って行くかということ。その結論は、「他の出来ないことをする」ということであった。
有名ラボとの勝負を避けて重箱の隅を突っつくようなことはしたくなかったし、人員が少ないので空振りも出来ない。そこで、実験の精度を最大限に高めて普通なら見逃すようなことにも目を配り、その意味を徹底的に考える。その上で行けると思えたら、多少のリスクがあろうとも果敢に挑戦している。その際に常に「本質は何か」と自問自答している訳だが、そこに研究者の個性を色濃く反映させるべきと考えている。自分という人間の個性が良く表現される研究、これが私の目指すサイエンスである。
また、私自身、留学を機に分野を変えている。これは一見無駄に見えるようであるが、私の研究を特徴づける大きな要素である。今更ながら、細胞生物以外の研究分野を経験していることは、他の細胞生物学者に真似ることの出来ない研究を確立する上で大いに役立っている。これからの若い人たちに強く勧めたい、分野を是非とも変えなさい。